川島 誠

文庫本夏のこどもたち
夏のこどもたち
単行本版も参照

独特な文体と細かい章によって、中学生のひと夏が描かれている。どこにでもいそうであり、どこか歪んでいる中学生たち。「夏のこどもたち」という題名からは爽やかなイメージを受けるかもしれないが、内容は少し濁っていて、心の内側からは黒いものも見受けられる。ぼくを中心として様々な中学生や大人が登場するが、どの人間からも本来の目的を失ったまま行動しているような怖さが感じられ、日常は曖昧に過ぎていく。しかし、そんな闇の部分を含めて、中学生の行動なのだろうと思わせる作品。