本の紹介 > リスト > 太宰 治
人間をよく見ている、それも暗く醜い様を。そしてあまりに見透かしている。そんな男には白紙のような人にしか心寄せることができない。骨身を磨り減らすようにやり過ごそうとする男の目の前に、振り払おうとしても不幸が深々と降り積もっていく。どうしようもできない世の中と自分との整合性の欠如。人間の恐ろしさを一身に浴びて人生をおそるおそる歩む弱い人間が、窮屈な世の中に罪を問う。