おまえは戦わないのか?——そう問いかけてくる物語だ。世界を諦めた大人や、大人に失望した子ども、未来を担う全ての人に、それでいいのか?と投げかけている。主人公の特徴でもある「考えろ」と何度も自分に唱えている様子や、一人の政治家によって人々が一斉に動いていく様子は、力強さと恐怖を同時に感じさせる。物語にある、全体主義の原義とファシズムの境や、国民投票による憲法改正の意義と危険性など、扱われる内容は決して簡単なものではないが、物語性が失われていないために面白く読みやすい。象徴的に描かれている魔王の存在に気付いた時に、自らの意志と覚悟が問われる。 |