三浦 しをん

文庫本月魚
月魚
単行本版も参照

私ほどあいつを必要としている人間はいない、というお互いの想いが錯綜し、双方で身動きが取れなくなっている瀬名垣と真志喜。お互いを必要としながら、瀬名垣は真志喜に、真志喜は瀬名垣に負い目があるため、二人の関係は独特に軋んだまま十年以上経ている。しかし、その関係も既に破綻を来しており、徐々に一点へと向かうべく変化し始める。満月の夜にだけ現われると言う池の主と、二人の奥深くに沈む心情が重なり、最後は美しい結末を迎えます。物語では流れ方がとてもしなやかで、二人の暗黙の了解とも思える様々な言動は非常に読み応えがあります。