森 絵都
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森 絵都
文庫本 | アーモンド入りチョコレートのワルツ |
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→単行本版も参照 | 大好きな絹子先生とのピアノレッスン。大人しい奈緒と勝気な君絵は自由な雰囲気の中、色んなことが起きるこのレッスンに惹きこまれていく。名残惜しむように自然と生まれた、レッスン後のワルツの時間。週に一度のもう一つの幸せなひと時だ。バタークッキーの香りが漂う中、ワルツのメロディーに合わせてステップを踏む。奈緒と君絵は音や空間や光までもが踊りだす時間を満喫する。でもそんな大切な時間はいつまでも続かない。奈緒と君絵は覚悟を決め、自分たちを貫きワルツの時間にけじめをつける。ドキドキする展開と、変わり者たちの突拍子もない言動が心地よく響いてきます。 |
単行本 | 宇宙のみなしご |
→文庫本版も参照 | 中学生くらいから自分たちで遊びを考える、ということは減ってしまうのかもしれない。この物語に登場する姉弟も小学生の頃までは自分たち独自の遊びばかりして遊んでいた。それがお互い中学生になって自然とやらなくなってきた遊び、それを久しぶりにやることになる。ほんの思い付きで始まった他所の家の屋根にこっそり登る「夜中の屋根登り」。スリルと闇と星を満喫できる新しい自分遊びだ。この遊び、初めは二人の秘密だったが、ある決意を持って飛び入り参加するクラスメイトたち。自分たち姉弟とは少し参加する意味合いが違う仲間との友情の物語。 |
文庫本 | 永遠の出口 |
→単行本版も参照 | 幼かった少女が時を重ねて成長していく物語です。小学生だった少女は、中学生、高校生となり自分も環境も変化しながら大人へ近づいていく。でもそこには壁もある。環境が変われば別れが訪れるし、新しい出会いも言葉の響きほど甘くない。それでもその時その時で大切な人ができ、不器用ながらも心の居場所を埋めていく。少女の心はそれぞれの体験が少しずつ後を引きながら変化し、形作られていく。同じクラスメイトとの距離感や思春期のとげとげしさからは、子供と大人の間を揺れている様子が窺えます。また、今だからこそ解るが、当時では言い表せない気持ちを美化せず、当時感じたままに表現しているので、本当に一人の少女が映し出されて見える作品です。 |
単行本 | 風に舞いあがるビニールシート |
→文庫本版未発売 | 6つの優しくてやわらかい日常が描かれた短編集です。全体として、物語に大きな浮き沈みはないのですが、登場人物の日常の中で、元気の出るひと時が描かれています。また同様に、物語の始まりから終わりまで、基本的に登場人物の生活や日常が変わるということもありません。変わらない生活の中で、あらためて喜びを感じたり、まだやれる、などと、ちょっとしたきっかけで登場人物たちに元気が湧いてくるのです。それぞれの大切なものを通し、小さくても確かな仕合せが伝わってきます。 |
単行本 | カラフル |
→文庫本版未発売 | 楽しく優しい言い回しで、生まれてきた人みんなに道しるべをしてくれるような作品です。人生いろいろですから、時には迷ったり、時には絶望したりもします。そのまま死を選んでしまう人もいます。この小説は、そうして死んでしまった人の続きを主人公がするというお話です。主人公は自殺をした真の魂を引き継ぎ、真として過ごします。そして、真に見つけられなかった道しるべに触れていくことになります。面白いのは、主人公の選ばれた理由が、抽選で当たったからであり、しかも、当たったら辞退はできず、行き先も選べない、また、途中でリタイヤもできないという部分。どれも人が生まれて来ることによく重なっているように思えます。 |
単行本 | ゴールド・フィッシュ |
→文庫本版も参照 | ゴールド・フィッシュはリズムに続く物語であり、今度はさゆきの将来への不安を中心に描かれている。2年近くが経ち、中学1年だったさゆきは3年になり、さゆきの周りもそれぞれに成長してきた。しかし、受験を控えたこの時期に、さゆきは自分の将来の夢を失いかけてしまう。それは「真ちゃんはあたしの、夢そのものだ」とまで思っていた、真ちゃんの夢が揺らいでいるからであり、自分もまた、本当にやりたいことを見つけられないでいるからだ。そして見えない自分に、戸惑い、うろたえ、焦り、イライラして、逃げ出そうとしてしまう。そんな不安と戦いの中、3匹の金魚が自分たち3人とどこか重なり、自分らしさを取り戻してゆく。 |
単行本 | ショート・トリップ |
→文庫本版未発売 | 森絵都さんが描いたショート・ショートというジャンルの、とても短い作品集です。題名の通り“旅”にまつわるトンチの利いた物語が数多く並べられています。一話のページ数はわずか3ページ。冒頭部分から一気にそれぞれの世界に引き込まれ、あっと言う間に終わります。当人たちは大真面目なのに、傍から見たらとっても滑稽、そんな笑える話や、最後まで謎に包まれた話等、内容は様々です。不思議な世界観が好きな人や絵本が好きな人にオススメです。 |
文庫本 | つきのふね |
→単行本版も参照 | 親も教師も信用できない、そして友達までも信用できなくなる、そんな時期。そんな時期は、何でもない小さな出来事により今ある全てが壊れてしまう。長い長い全てが壊れた日々。でも無言のSOSを誰かがきっと聞いている。この物語では、心にSOSを持った人たちが出てきます。突然親友でなくなってしまった二人の女の子や、好きな人をつけ回す男の子、本気で人類を助けようとして心が病んでいく青年。そんな人達が小さな出来事を重ねて、傷つき傷つけ、救い救われる。 |
単行本 | リズム |
→文庫本版も参照 | 変わらないものは貴いが、変わってしまうことを恐れることはないんだ、というメッセージが込められた作品。主人公であるさゆきが、環境の変化と、未来への不安にさらされながらも、どうにか戦おうとする様子が中学1年生の言葉で描かれている。ショックなことがあると、なるべく考えないようにしようとするさゆきは、とても素直で傷つきやすい。ずっと大切に思ってきたものが次々と変わっていくことで深く傷つき、自分を見失いそうになってしまう。そんな時、真ちゃんが教えてくれた自分だけのリズム。さゆきは変わっていく自分たちの未来に目を向けていく。 |